●庭園のご案内 〜燈籠〜
 回遊式の庭園には四畳半の小間席「青山」とともに十数種の燈籠が置かれ、それぞれ趣の異なる姿をご覧になりながらちょっとした散策を楽しむことができます。

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庭園

〜燈籠について〜

石燈籠は、仏教の伝来によって仏寺建築が日本で行われるようになるにつれ、中国・朝鮮半島を経て入ってきたといわれている。しかし中国では遺例が極めて少なく、朝鮮でもその形状は現在日本各地に見られるようなものではない。
当初、寺院に据えられた石燈籠は、平安時代にはやがて神社の広前に移され献灯として奉納された。庭園に用いられるようになったのは桃山時代、茶人が夜会の照明用に露地(茶室の庭)にとり入れるようになり、のち茶人の好みに応じて作られたり、社寺献灯された名燈籠を本歌として模刻するなど、照明用としてだけでなく、庭の添景物として鑑賞されるようになり一般庭園にも用いられるようになった。

〈燈籠の構成〉 

1.基 壇 (きだん)
 地面に接し、燈籠全体を載せるための大きな平石で、通常泥板ともいう。

2.基 礎 (き そ)
 燈籠の最下部で他の部分はこの上に載り、生け込み型の場合はこれを欠く。四角、六角、八角、円形等の平面で、側面には格狭間(こうざま)や幾何学紋が刻まれているものがある。上面は通常意匠化された蓮弁が刻まれている。基盤、台座、沓石、地輪などの別名もある。

3.竿 (さ お)
 ほとんどが円柱状で、燈籠の上部を支える部位。生け込み式の場合は直接地中に入ったり、雪見形のような異形のものでは何本かに分かれ曲がっている。柱の中央、または上部や下部に装飾のための節(帯)があるが、献灯や模刻を除いて庭園用は通常節の無いものが用いられる。

.中 台(ちゅうだい)
 火袋を受けるもので、前述の基礎を逆にしたような形であり竿をはさんで対称形をなす感じである。

5.火 袋 (ひぶくろ)
 燈火を入れるための最も主要な部分で、四角、六角、八角などの形がある。通常、方形の火口を開け、火口の無い面は彫刻を施したり、円と三日月形で太陽と月を表すものもある。

6.笠 (か さ)
 四角、六角が多く八角や円形のものもある。笠の軒先には蕨手(わらびで)といわれる渦巻状の装飾が施されるものも多く見られる。

7.宝 珠 (ほうじゅ)
 笠の上部中央にちょこんと載ったもので、球形に先端が少し尖った形として現されている。宝珠の下には露盤(ろばん)と呼ばれる台や、蓮の蕾を現した請花(うけばな)と呼ばれる装飾が施されるものもある。

以下、庭園内の燈籠をご紹介いたします(画像のクリックで拡大)

参考文献  上原敬二著 『石燈籠・層塔』  加島書店  1986年
        中根金作著 『庭 名庭の鑑賞と作庭』 保育社 1973年

織部形燈籠 1.織部形燈籠
 
 茶人大名・古田織部の好みと伝えられ竿の形が十字架で、上部のLhq(または逆向きのp)の英字や、下部の像刻をマリア観音にみたてたことからキリシタン燈籠ともいわれるが確証はない。生け込み式で笠は四角でやや波形、露盤は四角でほぼ円形の宝珠が載り火袋も四角で火口の左右に日月を彫り貫く。

雪の朝形燈籠  2.雪の朝形燈籠
 
 生け込み式で、円柱の竿の上部と中央 に節がある。丸型の中台の下部は連弁となり、六角形の火袋には横浅の方形で裏面は連子窓となり側面には日月が見られる。大き目の宝珠はちょうど雪が積もったように見え、この名がついたようである。薮内、また千家形ともいう。 

珠光形燈籠

  3.珠光(じゅこう形燈籠
 
 基盤、中台、火袋とも四角で、中台には桐の葉とサイコロの5の目のような文様が彫られる。火袋は四方吹流しで、円柱の竿の中央には小判型の連続丸紋の節が見られ、宝珠を欠く伏鉢状の笠が特徴。珠光形でも形の違うものがあるようで、侘び茶の開祖・村田珠光に因んだものかどうかは判然としない。

桃山形燈籠  4.桃山形燈籠
 
 小ぶりで、丸い笠が特徴の桃山形の変形と考えられ、笠の正面には桃の形の陽刻が施されている。円形の中台の上に丸みを帯びた火袋が載り、円柱の竿で 支えられ、先端が尖ったやや大きめの宝珠がアクセントとなっている。江戸時代以降に作られた比較的新しい形とされる。

清滝形燈籠 5.清滝(きよたき)形燈籠
 
 京都、上醍醐の清滝宮のものが本歌で、基礎から笠まで八角形で統一されている。基礎と、中台の下部には単弁の蓮弁があり火袋を受ける段が一段作られている。笠は波型に反り、その先の蕨手は力強い。宝珠の下に請花が付き、全体としてあかぬけした美しい姿である。   

利休形燈籠  6.利休形燈籠
 
 
六角形の笠は長く上下に伸びた大形で、蕨手がつく。火袋は膨れて丸みがつき火口は二面あく。大ぶりの中台は蓮弁があり、短い竿の中央には一重帯の装飾が見られる。利休形は各種あり、献灯用が茶席に採り入れられたのだろう。木陰にあるため青さびのような苔で覆われる。

柚ノ木形燈籠 7.柚ノ木(ゆのき)形燈籠
 
 
本歌は平安時代末の作で、春日大社の柚の木の下にあったことからの名称。中台以上は八角形で、六角形の基礎には一区画ごとに格狭間が作られその上部には複弁の反花が付く。竿は円柱で三筋、中台の下部は八角の隅ごとに大きな単弁の蓮花がある。笠の軒は薄く古い形式のため蕨手は無い。

四角露地形燈籠

 8.四角露地形燈籠
 
 
中台、火袋、笠ともに丸みを帯びた正方形を基本に構成され、基礎がなく竿も短く小ぶりで愛らしい燈籠となっている。表裏の両面に火口を開き、日月を象った窓が向かい合って設けられる。庭園の足元照らしとして使用される。

 9.六角雪見形燈籠
六角雪見形燈籠 
 
浮見形がなまって雪見形という名が付いたという説があり、水辺に置かれることが多い。薄手の大きな笠と、竿が三脚、四脚などに開くのが特徴である。火口は六面とも開いており、献灯用ではなく観賞用として好まれる。

 

袖形燈籠 10.袖形(そでがた)燈籠
 
 鰐口形灯籠ともいう。四角板の基礎の上にはコの字型の火袋をのせ、その上に四角形の笠をのせる。火袋のかきこみ天井から釣燈籠をかけるようになっている。竿と中台が一体となったような変形ではあるが、四角で統一され全体のバランスがよい。

一休形燈籠11.一休形燈籠 
 

 
基礎から笠までほぼ正方形で統一されるが、方形の火口の裏には大丸の中に小丸が3つのくり抜かれた窓がついている。基礎の上面には複弁といわれる、中央で二分された2つの蓮弁が寄り添って一つの花になっている。一休の名の由来は定かではないが近年茶庭に好まれる。

水蛍燈籠 12.水蛍燈籠
 

 
基礎はなく竿は円柱形で中台より上は方形で火袋は前後に四角の火口と両側に小さい三角形の穴を二つ重ねた形。笠の下面は平らだが上端は自然のままのようである。火を灯すと水に映えてきらめく様子からこの名が付けられたと思われ、よく水辺に設置される。

六角形燈籠 13.六角形燈籠
 
 
はっきりした名称は不明。基礎があり竿から笠まですべて六角形で統一された姿は美しい。中台の側面は波形の削り出しがあり、あまり見られない意匠である。火袋の火口は前後に開き、他の四面には地蔵のような彫刻が施される。蕨手のない薄い笠には12枚の連弁が線刻される。

鷺(さぎ)形燈籠 14.鷺(さぎ)形燈籠
 
 
高さ2m程あり、火袋に電球を取り付けて使用している。火袋の火口の裏に鷺の立ち姿が陽刻されており、そこから名前が付けられたようである。楕円を半分に切ったような笠には六本の筋が付き四角い露盤の上には先の尖った宝珠が載っている。竿の節が中央で外側にふくらむのも特徴。


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